人気ブログランキング | 話題のタグを見る

「銀河鉄道の夜」より

銀河鉄道の夜

宮沢賢治
より抜粋



〔六、〕銀河ステーション

 気がついてみると、さっきから、ごとごとごとごと、ジョバンニの乗ってゐる小さな列車が走りつづけてゐたのでした。ほんたうにジョバンニは、夜の軽便鉄道の、小さな黄いろの電燈のならんだ車室に、窓から外を見ながら座ってゐたのです。車室の中は、青い天蚕絨を張った腰掛けが、まるでがら明きで、向ふの鼠いろのワニスを塗った壁には、真鍮の大きなぼたんが二つ光ってゐるのでした。
「銀河鉄道の夜」より_a0135756_1564239.jpg
 すぐ前の席に、ぬれたやうにまっ黒な上着を着た、せいの高い子供が、窓から頭を出して外を見てゐるのに気が付きました。そしてそのこどもの肩のあたりが、どうも見たことのあるやうな気がして、さう思ふと、もうどうしても誰だかわかりたくて、たまらなくなりました。いきなりこっちも窓から顔を出さうとしたとき、俄かにその子供が頭を引っ込めて、こっちを見ました。

 それはカムパネルラだったのです。
「銀河鉄道の夜」より_a0135756_1563829.jpg
 ジョバンニが、カムパネルラ、きみは前からこゝに居たのと云はうと思ったとき、カムパネルラが
「みんなはねずゐぶん走ったけれども遅れてしまったよ。ザネリもね、ずゐぶん走ったけれども追ひつかなかった。」と云ひました。
「銀河鉄道の夜」より_a0135756_1563422.jpg
 カムパネルラは、なぜかさう云ひながら、少し顔いろが青ざめて、どこか苦しいといふふうでした。するとジョバンニも、なんだかどこかに、何か忘れたものがあるといふやうな、おかしな気持ちがしてだまってしまひました。
「銀河鉄道の夜」より_a0135756_1564697.jpg
 ところがカムパネルラは、窓から外をのぞきながら、もうすっかり元気が直って、勢よく云ひました。

「あゝしまった。ぼく、水筒を忘れてきた。スケッチ帳も忘れてきた。けれど構はない。もうぢき白鳥の停車場だから。ぼく、白鳥を見るなら、ほんたうにすきだ。川の遠くを飛んでゐたって、ぼくはきっと見える。」そして、カムパネルラは、円い板のやうになった地図を、しきりにぐるぐるまはして見てゐました。まったくその中に、白くあらはされた天の川の左の岸に沿って一条の鉄道線路が、南へ南へとたどって行くのでした。そしてその地図の立派なことは、夜のやうにまっ黒な盤の上に、一一の停車場や三角標、泉水や森が、青や橙や緑や、うつくしい光でちりばめられてありました。ジョバンニはなんだかその地図をどこかで見たやうにおもひました。

「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」



昔は何とも思いませんでしたが
なんど読んでも、また読みたくなるお話です
なんども読んでるから、
みんなやザネリがこの鉄道に乗れなかったのか、
カンパネルラが最初に青ざめて少し苦しそうだったのか、
それだけで、半泣きになります

Commented by JO at 2013-09-25 16:19 x
この写真にある緑の石のピアスが気になるのですが、どちらで購入することができるでしょうか。
Commented by honeygo at 2013-10-02 16:12
JOさま
こんにちは。お返事遅れてすみません。
今日気がつきました。
緑色のピアスは、ペリドートです。
展示会等で、ショップにアップする前に売り切れてしまったのですが、
材料はありますので、お作りすることは可能です。
もし、まだご興味あるようでしたら、
ショップの http://honeygo.jp/ 
お問い合わせよりお知らせいただけますでしょうか。
どうぞよろしくお願いします。
Commented by honeygo at 2013-10-02 16:50
JOさま
すみません、追記です。
↓ ここのページで全体像が見えます。
http://honeygo.exblog.jp/17101375/
ご参考までによろしくお願いします
by honeygo | 2013-02-23 15:51 | HoneyGo☆ | Trackback | Comments(3)

いろんなこと‥☆                  つれづれに♪


by honey☆spica
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31